研究テーマ
本研究室では、天体望遠鏡を用いた観測を行い、得られたデータの解析に取り組みます。さらに、観測とデータ解析によって捉えられた天文現象を数理モデルによって表現することで、天体や宇宙の理解を深めることを目指しています。
星形成領域の観測研究

宇宙空間における星は、その多くが星の集団(星団)として誕生することが知られています。これらの星は、「分子雲」と呼ばれる、主に水素分子からなる希薄なガスと塵が混ざった雲の中で、重力収縮によって形成されます。
このような分子雲は非常に低温であるため、私たちの肉眼では観測することができません。しかし、電波領域では電磁波を放射しており、電波望遠鏡を用いることでその内部を観測することが可能です。私たちはこうした観測を通じて、星が生まれる現場を捉えようとしています。
惑星形成領域の環境調査

惑星は、若い星の周囲に形成されるガスと塵からなる円盤の中で、塵が成長して微惑星となり、それらが衝突・合体を繰り返すことで形成されると考えられています。しかし、これらの形成過程については、観測的にはまだ十分に解明されていません。
これまでに6000個以上の系外惑星が発見されていますが、太陽系のような構造をもつ惑星系は多くありません。このような惑星系の多様性は何に起因するのでしょうか。私たちは、若い惑星系の観測を通じて、「惑星形成に必要な物質がいつまで存在するのか」や「惑星に大気が取り込まれる時期」などを明らかにし、これらの謎の解明を目指しています。
天文データベースの構築

天文学者にとって、観測データは極めて重要な財産です。特に突発天体や彗星のように短時間で現象が終わってしまう天体は、他の観測の最中に偶然背景に写り込むこともあり、過去のアーカイブデータが貴重な証拠となります。
このようなデータを長期的に維持・活用するためには、天文データアーカイブシステムの構築が重要な課題です。本研究室では、PostgreSQL を用いた天文データベースの整備にも力を入れていきたいと考えています。

最近取り組んでいる研究
- ブラックホール探査機で宇宙の「酸素」を探る -
酸素(O₂)は、宇宙の星形成領域にも存在しています。しかしその量は予想よりはるかに少なく、「宇宙の酸素はどこに隠れているのか」は天文学の未解決問題のひとつです。
当研究室では、次世代宇宙望遠鏡 BHEX(Black Hole Explorer) を使ってこの謎を解明したいと思っています。BHEXはブラックホールの撮影を主目的とした宇宙VLBIミッションですが、地上局と同期できない時間帯を単一の電波望遠鏡として活用する「単一鏡モード」が計画されています。
地球の大気には酸素が含まれるため、酸素分子の電波シグナルは地上からでは大気に吸収されてしまいます。宇宙空間にあるBHEXだからこそ、これまで観測が難しかった周波数帯で、史上最高の感度で酸素分子や酸素メーザーを観測できます。
星が生まれる現場の化学・物理状態の解明を目指し、この新しい観測モードの実現可能性を検討しています。
